これからの「正義」の話をしよう 〜いまを生き延びるための哲学〜 マイケル・サンデル
マイケル・サンデル Michael J. Sandel
早川書房
売り上げランキング: 26
今年、一番の話題になっている本のひとつ。さっそく買って読み始めたが、340ページを超える本だけに、始めの1章でメゲテしまった。そこで、録画してあったNHKで放映されたサンデル教授の東大安田講堂での授業風景の番組を観て、その訳がわかった。
ハーバード大学で一番の人気授業であるサンデル教授の授業は、教授が一方的に話す内容に面白さがあるのではなく、参加している学生からいろいろな意見を引き出し、授業の場で対立する意見をぶつけ合わすところに、授業の価値と面白さがあったのだ。それだから、過去の授業内容の記録として固定化された内容の本書を読んでも、授業の現場のリアルな臨場感が伝わってくるわけでもなく、読者にとって退屈な内容に思えてしまっていたのだ。
それだからと言って、この本の価値を否定するつもりはない。むしろ、授業の番組を観ることで、はじめてこの本の価値と読み方が見えてきた。本に書かれている事例は当然、米国の学生の関心を呼びやすいテーマが中心となっているが、読者がそれを日本の現在のテーマに自分で置き換えることで、サンデル教授の意図する「正義について考える習慣を身に付ける」ことが実現できる。
そのためにも、この本に取組む読者は、なんらかの方法でサンデル教授の授業風景を一度は観た上で、この本に書かれた内容にそった授業の場面を想像しながら、読み進めることをお勧めする。
グローバル化が進展する中で、我が国だけでなく世界的にも富と貧困が拡大しつつある今日、日本で本当の民主主義を築くために、すべての20代の人達に読んで欲しい名著である。
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