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第3話 工場は湘南

第3話 工場は湘南

社長の初仕事はまず会社の製品を知ること。JRの茅ヶ崎駅からタクシーに乗った。
湘南工場と言うから、潮の香りのする所かと思っていたのに、タクシーはどんどん山の方に向かい、まわりは田んぼと工場や倉庫、郊外店舗なんかが散在していて、桑田の湘南のイメージとは大違い。
「社長、そろそろ着きますよ」
20分ほど走ると案内係りの総務の桧君が、声を掛けてきた。年上の人ばかりの会社で、社長と言われるたびに顔が真っ赤になりそうだけど、桧君にはそう呼ばれてもびっくりし無いで済む。桧君は入社1年目のバリバリの新米社員だし、私よりもおどおどしているみたいで、気にならない分ちっとも頼りにはならない。
敷地の入り口でタクシーを降りると、左手の守衛室の中で緊張した顔をしたオジサンがこちらを見て敬礼している。思わずこちらも敬礼しそうになるところだった。その先にはカーキいろの作業服を着た偉そうなおじさん達4人が、私を待ち構えていた。母殿から、「会社の人に会った時は会釈をすれば良いのよ」と言われていたので、普段めったに縁のない「会釈」に挑戦、まずは無難に切り抜けられた。
挨拶が済むと、守衛室の隣にある都会ではめったに見ない平屋のくすんだ建物に通された。これが事務棟ですよと説明されたけれど、会社と言うと都会にあるビルの中を想像していたのとは大違い。会議室の中も使い込んだ応接セットで、結構質素にやっているみたい。
「何からご覧になりますか?」
工場長の浦川さんは、早く案内をしたくてむずむずしているみたい。
「まず製品から見せて頂けますか?」
父殿は「住宅に使うものを作っているんだよ」と言っていたけれど、実際に見るのは今日がはじめて。事務棟の廊下にあるショーケースの中や、壁面にずらっと製品が並んでいた。
「この工場の代表的な製品は、この耐震ジョイントです。木造住宅の耐震性能を飛躍的に向上させるもので、特に東海地域で人気があり、最近では首都圏でも普及しはじめているんです。家に住んでいて目にすることはないと思いますが、これからの木造家屋には欠かせないものです。」
そういえば最近、家の近くの新築の現場で見たことがある。
その後、ヘルメットを渡されて「資材置き場」「製造課」「倉庫」と1時間ばかりで工場を一回り案内してもらった。

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